2018年度 講演会開催報告【埼玉会場(7月17日)・大阪会場(10月15日)】
【講師】 第一部:水野 有三先生(埼玉)、有田 憲生先生(大阪) / 第二部:磯田 道史先生
平成30年度の友の会講演会は、埼玉会場(7月17日)と大阪会場(10月15日)の二会場で開催しました。両会場とも申込み多数により参加者を抽選とさせていただきましたが、それでもたくさんの方々にご参加をいただきありがとうございました。
両会場とも、第一部の講演は、健康で長生きをすることの意義について、医療の各専門分野の医師が、これまでの臨床経験や研究データを基に、日常生活での健康管理について講演をしていただきました。
埼玉会場では、公立学校共済組合関東中央病院の医務局長・代謝内分泌内科部長 水野 有三先生により、「老年医学の知恵で健康長寿を」と題した講演をしていただきました。
高齢化社会と言われる今日、元気に自立して、日常生活を送ることができなければ、長生きをしても、けして幸せではありません。歳をとれば健康な人でも、少なくとも身体は衰えてくるものです。私たちは、この衰え(フレイル)を予防して、元気に自立して生活できる期間(健康寿命)を延ばすことが大切です。そのためには、十分なエネルギーと蛋白質の摂取と体重維持、筋肉の虚弱(サルコペニア)を予防するための運動習慣を持つこと、孤立や閉じこもりならないため、積極的に趣味の活動やボランティア等の社会参加に取り組む、3つのポイントの大切さを水野先生の配布資料に基づきお話しいただきました。
大阪会場では、公立学校共済組合近畿中央病院 病院長 有田 憲生先生の専門分野である脳神経外科医の立場から、「脳卒中を知る・防ぐ」と題した講演をしていただきました。
がん、心疾患と並んで死因の高い脳卒中は、脳血管が詰まったり、狭窄したりして起こる脳梗塞と脳の中に出血が起こる脳出血に分けられます。脳卒中の治療は、脳梗塞か脳出血のどちらのタイプ(病型)を診断し行うのですが、その判定のために画像診断(CT、MRI等)を用いて診断し、適切な治療(手術、クリッピング、TPA等)を行うことが重要です。
脳卒中の原因は、病型によって異なりますが、最近では危険因子がわかってきており、脳卒中にならないようにするための予防として、高血圧、糖尿病、不整脈などの危険因子の症状あれば早目に治療すること。また、日常の危険因子としての喫煙、飲酒、偏食、肥満、運動不足は、脳卒中の発症リスクを高めることになるので、日頃から禁煙や暴飲暴食を避け、適度な運動をしながら、自分の健康管理に努めることの大切さをお話しいただきました。日常生活で留意すべきポイントなど、患者さんと家族が知りたい情報も丁寧に解説いただきました。
第2部の講演は、京都市の国際日本文化研究センターの准教授で、歴史家の磯田 道史先生による「日本史にみる教育の力」と題し、我が国の歴史において、教育がそれぞれの時代の文化や産業等にどのような影響を与えたか、磯田先生自ら古文書等を読み解いて得た史実を基にお話をしていただきました。
江戸時代、災害により領地が壊滅的な被害を受け、領民の立場に立って、治水、行政、医療等の行政改革を実践した大名が領民の暮らしを豊かにし、後継者の育成のため、教育にも力を注いだことにより教育の種が蒔かれました。また、明治維新の中心となる薩摩、長州、佐賀の各藩は、藩学校を設置し就学の義務を課し、藩士に教育する機会を作り、人材育成に力を入れたことで、これらの人達によって明治維新という偉業がないし得ることができたと、わかりやすく説明してくれました。
最後に、歴史において、狩猟から農耕、農耕から工業、工業からサービス産業と技術変化が進み、現代は人工知能(AI)の技術が進歩し、暮らしも豊かになっている中、コンピュータや人工知能が、人に代わって仕事を行えるような時代になって来ている。このように技術革新が進んでいる社会において、教育に求められるものは何かと問いかけてくれました。もう少し、お話を聞きたいという余韻を残して講演を終えました。
今回も沢山のお客様にお越しいただき、ありがとうございました。休憩中は自費出版の本を手に取っていただいたり、血管年令の測定をしたり、介護サポート保険の説明を受けたり……。皆さまに楽しんでいただけたようでした。
また、来年お目にかかれるのを楽しみにしています。