新型コロナ禍で、各地の諸行事が中止か延期にならざるを得ない状況が約4年間続いた。それが昨年の9月頃から、ようやく落ち着き、観光地への人の流れが緩和された。スポーツの秋にふさわしい小、中、高等学校の運動会は笛や太鼓の音、応援団の声援の盛り上がりが私の家まで聞こえてきた。そのような世相の中で、私が勤務していた長崎県の波佐見中学校の子ども達の同窓会の案内状が届いた。しかし、後期高齢者となり、眼鏡や補聴器が必要で、現職の時は約50分かけて通った運転に自信がないなどの理由を書いて欠席届を出した。同窓会の期日も忘れていたら、ある日の早朝、「先生に会いたい、在宅ですか。」との電話があり、6名(男2、女4)が車で自宅まで訪ねて来てくれた。丸刈り頭、おかっぱ髪の15の春から約半世紀、70歳になっていても、当時の懐かしい顔が蘇ってきた。放課後は、県中体連出場を目指し日が沈むまで汗水流して練習に打ち込んだ青春時代のことや、授業中、先生が板書している隙をみてN君がSさんに手紙を渡していた甘い恋の物語など、みんなで笑いながら時間の経つのも忘れて話の渦に巻き込まれた。昼食の準備をしようとしたら、大阪からの2名が長崎空港まで急ぐとかで、そそくさと帰路についた。遠路わざわざ来てくれたことが嬉しく感動を覚え、教師をしていて良かったと思う一日だった。
「教師冥利の一日」 佐賀県 K.N.(88歳)
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